近年は通信環境や物流環境の改善により、ビジネスのグローバル化が急速に進展してきています。国内市場の大幅成長が見込みづらい今日、より大きな市場を求め、世界に目を向けていくのもビジネスにおける当然の判断でしょう。
とはいえ海外進出はハードルが高い、自社の規模やリソースでは夢のまた夢、と思われている企業も多いのではないでしょうか。そうしたケースでも挑戦しやすい越境ECに熱視線が注がれています。今回はそんな越境ECの基礎を解説します。
目次
越境ECとは
越境ECの市場規模
越境ECのメリット、デメリット
越境ECのメリット4つ
越境ECのデメリット3つ
越境ECの始め方
自社商材の分析
販売ターゲットを考える
多通貨決済とネットバンキングの準備
出店方法の決定
まとめ
越境ECとは
越境ECとは、その名の通り国境を越えて電子商取引(E-Commerce)を行うことです。国内に関して言えば、日本企業がインターネットを活用し、グローバルに商品販売を行うこと、世界にオンラインショッピングの機会を提供しビジネスを行っていくことを指します。
過去には訪日中国人客による爆買いが一躍話題の的となりましたが、日本企業の商品・サービスに魅力を感じる海外客は多く存在します。そうした世界各地に居住する潜在顧客をターゲットにサイトを開き、ECを展開していくのが越境ECなのです。
国内のみの販売に比べ、大きく販路を拡大できるほか、これまでにない視点での自社商材における強みを見出すことができたり、新規顧客を開拓したりしやすくなるため、売上の増加や飛躍的なビジネス成長も期待できる事業戦略となります。
かつて海外進出は、一定の規模以上の大手企業でなければ難しいものでしたが、昨今はプラットフォームの進化など環境整備が進み、越境ECというかたちで、中小企業や個人事業主でも十分に参入可能となっています。世界的にも越境ECの市場規模は拡大傾向にあり、人々の多様なニーズとシーズが、まさに国境を越えて行き来する時代が到来したと言えます。
越境ECの市場規模
現状の越境ECがどれほど成長してきているか、具体的な数値から見てみましょう。令和3年度の経済産業省発表による「電子商取引に関する市場調査報告書」(2022年8月公開)によると、全世界の越境EC市場規模は2019年時点で7,800億米ドル、これが2026年には4兆8,200億米ドルにまで拡大する予測となっています。
この間の年平均成長率は約30%と脅威的に高く、認知度の上昇や自国にない商品・サービスへの欲求、安価さや安心・信頼といった消費者側の事情と、越境ECへの参入事業者の増大が相まって、これだけの成長を支えると考えられています。
各国間の越境EC市場規模について、2021年のデータから米国・中国・日本で推計すると、EC先進国たる米国は越境BtoC-ECの日本・中国向けで2兆409億円、中国の場合、4兆7,165億円、日本の場合では3,727億円でした。
日本からの購入額に着目すると、米国は1兆2,224億円、中国が2兆1,382億円と推計され、それぞれ世界的にもEC市場規模の大きな2国ですが、日本にとっても良い購入者となる可能性が高く、今後も期待値の高いビジネス市場とニーズがあると見込まれます。
越境ECのメリット、デメリット
成長市場であり、ビジネスの場としてきわめて魅力の高いところと映る越境ECですが、参入にはやはりメリット、デメリットの両面があります。それぞれを特徴として理解し、最大限にメリットを引き出した活用を考えることがポイントです。
越境ECのメリット4つ
■海外への販路拡大が可能になる
越境ECでは、国境を越えて商圏を拡大できるため、国内市場では得られなかった海外の新規顧客を獲得することができます。国内では人口が減少傾向にありますが、世界的には増加傾向にあり、新たに経済力を得て旺盛な消費意欲をもった国民を多く擁する国や地域もあります。成長著しい中国やASEAN諸国の市場など、広く販路を獲得できれば、自社の売上を効果的に伸ばせるようになるでしょう。
日本ではあまり売れにくい商材が爆発的にヒットしたり、国内人気の低下した過去商品になお高いニーズがある国や地域が見つかったりする場合もあります。顧客数の増加や販売エリアの拡充だけでなく、その地にあったターゲット戦略をとることで、より一層の収益改善も見込めます。
■現地での実店舗経営よりハードルが低い
ECが一般的でなかった時代、海外で商品を販売するには、その土地に出店することが基本でした。現在も現地に実店舗を設ける方法もありますが、その場合、土地の購入からテナント賃貸、内装、スタッフの手配、運営・管理、仕入れや人件費など、様々な工程に手間と費用が必要で、綿密な計画とまとまった初期投資が不可欠となります。
国内とは異なる多様な事情に配慮する必要もあり、現地ビジネスとして店舗運営を行っていくことは容易ではありません。中小企業や個人ではあまりに困難な道となるでしょう。
しかし越境ECならば、サイトを介したビジネスですから、こうした手間やリスク、費用を最小限に抑えて開始することができます。サポートするプラットフォームも充実してきており、ノウハウがあまりなくとも始められます。国内に居ながら、ごく少ないステップを踏むだけで海外進出が叶うこと、海外の顧客に商材を訴求・販売したり、ファンを醸成したりできることは越境ECの大きなメリットです。
■注目度の高い日本の商品として提供できる
日本企業の商品やサービスは、高品質で細やかな点まで配慮が行き届いているといった面で注目され、海外で高い評価を受けてきました。他にはない特有の日本文化に関連した商品も、大いに魅力のあるものとして一定層に高く支持されています。
こうした知名度の高さや評判、強みを活かし、商材を提供していくことは、越境ECへの参入を成功しやすくする一因となります。関心はあるけれど来日するには遠すぎる、一度訪れて良かったものをまた買いたい、といった海外の顧客ニーズをとらえていけば、売上を効率良く伸ばせるでしょう。
■英語対応すれば競合の少ない環境で戦える
国内では競合他社との争いが厳しく、価格競争など限られたパイの奪い合いになっているケースでも、越境ECで海外との売買を始めれば、競合の少ない環境で有利にビジネスを展開できるようになる可能性があります。
とくに英語対応を完了させると、国際ビジネスとして多様な国や地域との取引がスムーズに行えるようになり、ライバルの少ない商圏でビジネスを軌道に乗せていくといったことも大いに期待できます。
越境ECのデメリット3つ
■輸送コストとリスクの高さ
越境ECの場合、海外居住の顧客へと配送するため、どうしても国内配送より輸送にかかるコストがかさんでしまいます。空路や海路を用いて発送するため、配送料が高くなるのはもちろん、関税もかかるため、それらのコストによる金額面の問題から、購入を躊躇う顧客も出てきてしまうことが考えられます。
また、輸送プロセスが長く複雑になる分、紛失や商品破損などのリスクも高まるため、配送パートナーを慎重に選定するなど工夫が必要となります。
■言語や決済方法など販売先に合わせた対応が必要
国境を越えるものである以上、言語や文化、社会習慣の違いによる影響を受けることは避けられません。サイトのページにおける表示を、対象国の言語に合わせる必要があることはもちろん、メールやチャットなどでの問い合わせ・サポート対応も現地言語でできるように体制を整えておく必要があります。
また、決済方法もその国や地域に合わせて考えねばなりません。国内ECでは多種多様な決済手段を安定して利活用できる環境が整備されていますが、これはあくまでも一部の先進国に限られることで、カード決済の不正利用が多発していたり、一般的なWeb決済サービスも普及していなかったり、上限制限があるなど、うまく使えない可能性があります。その国や地域で安定して利用できる決済手段を見定め、お金の流れを整えておくことが大切です。
■販売先で適用される法律や規制への対応が必要
国や地域により、荷物や個人情報に関する法律や規制は様々です。扱う商材によってはライセンスの取得が必要であることもあります。EU圏内の個人情報関連で適用されるGDPR(一般データ保護規則)による規制は厳しく、これらへの対応にも十分注意せねばなりません。
これらの知識や対応が不完全なままスタートしてしまうと、のちの大きなトラブルを招くもとになります。現地の法律や規制などについては事前確認を徹底し、それらルールの改訂にも臨機応変に対応していくようにしましょう。
越境ECの始め方
越境ECを始めるにあたり、何より重要なのは準備プロセスを丁寧に踏むことです。手軽に開始できるプラットフォームサービスが増えた今日だからこそ、正しい知識をもって確かな準備作業を進めることが成否を分けるポイントにもなります。以下の手順や注意点を確認して検討を進めましょう。
自社商材の分析
まず自社の商品やサービスを客観的に分析します。配送にかかる時間や破損トラブルにかかるリスク、海外ニーズがどれほど望めるのかなど、越境ECに向く商材かどうか吟味することが大切です。
国内ECでも同様ですが、販売できることと売れること、確かな利益を生むことはイコールではありません。そもそも日本からの輸出に規制がかかるため、対象にできない商材になる場合もあります。また、関税が高い商品や、輸送費が多額にかかり現地でも似たものを購入できるような商品は売れ行きが伸びる可能性は低く、販売しても利益にならないでしょう。
反対に、国内で思うように売れなかった商品がヒットすることもあります。自社商材について、広く多角的に分析を進めましょう。
販売ターゲットを考える
越境ECの魅力として、何よりその市場の広さ、あらゆる国や地域に商圏を広げられる可能性の大きさがあります。しかし、だからといって販売ターゲットを曖昧にしたままスタートすると、販促手法などを定められず、届けたい海外消費者に情報が届かない、無駄な施策や対応の手間ばかり生じてコストがかさみ、せっかくの売上を帳消しにしてしまうといった事態に陥りかねません。
先の分析で得た商材特性を踏まえ、効率良く販売していけるようターゲットの検討を行いましょう。販売しようとしている商材のニーズがある国や地域はどこか、そこでの人々の購買行動にはどんな特徴があるか、現地における主要言語や為替変動リスクなども考慮しつつ、ターゲットを設定します。
ターゲット選定は開始後も定期的に見直していくと良いでしょう。売れ筋を分析し、関連ラインナップを充実させたり、似た文化圏に新たなアプローチをかけたり、適宜修正を加えながら進めていくと効率的です。
多通貨決済とネットバンキングの準備
越境ECの場合、ターゲットが海外顧客となりますから、多通貨決済への対応が必要となります。カード決済を導入する場合も、不正を防ぐセキュリティ対策などをしっかり施す必要があります。
取引をスムーズに、それぞれの受取通貨を自国通貨とできるような仕組みを整えておくと良いでしょう。そのためにも、インターネットバンキングを準備しておくと便利に使えます。
出店方法の決定
越境ECと一口に言っても、様々な出店パターンがあり得ます。現地法人を設立して自社でサイトを開設、出店する方式や、各国に個別で対応する自社サイトの構築・運営を図る方式の場合、コストや手間、ノウハウの面でハードルが高く、全体に難易度の高い取り組みとなりますが、出店料や手数料などがかからず、全てを自社利益にできること、オリジナリティの高い出店・販売ができることなどに利点があります。
もう少しハードルを下げるなら、海外の現地モールに出店する方法が考えられます。現地における知名度と信頼度の面では、この海外現地プラットフォームを活用するのが最適でしょう。その土地で高いシェアを占めているモールに出店すれば、自社商材をより多くの現地ユーザーに知ってもらいやすくなります。購入者も慣れた決済方法や物流システムを利用できるため、気軽に試しやすいでしょう。
現地の商習慣に則ったかたちで売上拡大を目指しやすいのは、この方法と言えます。ただし、現地の言語で交渉を行ったり、対象国の法律や規制に対応した各種手続きを自前で行ったりしなければならない場合があります。
最も手軽なのは、海外対応の国内サービスがあるショッピングモール、プラットフォームに出店する方法です。Amazonなどグローバル展開のモールを利用したり、ShopifyのようなECサイト構築のプラットフォームサービスを用いたりします。国内サービスとして、利用に際し日本語が使える点が最も嬉しい点で、サポート体制も行き届いています。
ただしモールの場合、配送コストや手数料が国内以上に高額となる点がマイナスです。Shopifyは簡単にECサイトを構築できることに加え、多言語・多通貨、海外配送にも対応し、越境ECに強みをもつプラットフォームで、高い拡張性を有しながらもコストを抑えた導入が可能な魅力をもっています。
まとめ
時間や場所を問わないECで、多様なニーズと商圏をとらえ、ビジネスの拡大を目指していくなら、対象を世界に据える越境ECを検討しない手はありません。安易な展開はトラブルのもとですが、きちんと準備を整えれば、現在のビジネス規模を問わずチャレンジできる環境が広がりつつあります。
本気で越境ECの成功を目指すなら、専門的な知識と経験を有するプロフェッショナルに一貫したサポートを受けることが大切です。
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