はじめに
みなさん、こんにちは!ECタイムズ編集長のみなつです。
EC事業に携わられている皆さまは日々、様々な課題に向き合われていることと思います。
ECの課題は内容も多岐に渡りますが、共通して課題解決には「問題の本質を見抜くこと」が重要になります!
ですが、そもそも本質的な思考とはどのようなものなのでしょうか?
また行き詰まった時にはどのような専門家に頼ればよいのでしょうか?
そんなお悩みをお助けするべく、今回はECのプロとして活躍されているKRさんにインタビューしました。
今回は前編として、当社にも多くのご相談をいただく「自社ECの売上アップのコツ」と「本質的思考」について語っていただきました!
とても濃い内容になりましたので、ぜひ最後までご覧ください!
KRさんのご経歴
はじめに、KRさんのご経歴を簡単にご紹介します。
KRさん
2014年に野村総合研究所に入社。その後株式会社フリークアウトのPdM、ECプラットフォームを作っているスタートアップ会社のPdMを経て、2年前に独立。現在はEC事業者の支援やサービス開発をされています。
自社ECをグロースさせるための考え方を伝授!
——KRさん、本日はよろしくお願いいたします!
KR:
よろしくお願いいたします!
まずやるべきことは自社の健康診断
——自社ECを運営されている事業者さまから、売上に悩んでいるが、どこから手をつければいいのかわからないというお悩みが多く寄せられています。この場合、KRさんはどのようなアドバイスをされますか?
KR:
基本的に「これをすれば劇的に儲かる!」みたいな汎用的な解はほとんどありません。あったとしてもその効果は部分的で本質的な策ではないと思います。
事業者さまごとの業態、ジャンル、フェーズ、プロダクト、世界観、大切にしている思いによって解は異なるので、それぞれの個別解を導き出すために都度事業者さまの思いを何度もヒアリングして現状とのギャップを洗い出す健康診断を行うことが大切だと考えています。
——スタート地点を間違えないようにするにはとても大切なプロセスですね。この「健康診断」というワードについてもう少し詳しく教えてください。
KR:
まず前提として、EC事業と一言で言っても運営に必要な専門知識(マーケット情報、SNS、広告、システム、商品開発、ロジスティックなど)は多岐に渡り密に絡み合うため、売上を構成する変数がかなり複雑な事業です。また、それらの変数も短期的な施策によって変動する変数、長期的に変動していく変数があるので、どの変数をKPIとおくべきかの選定が難しいと思っています。
この健康診断で私が重要視している点は「潜在的な課題を認識すること」です。売上、セッション数、CVR、注文単価のような変数を見ておくことももちろん大切なのですが、それらの数値は短期的な成果に直結して変動するケースが多いです。
本質的な課題は短期的な1つの変数として分かりやすく計測できるものではなく、中長期的に複雑に変動するケースが多いため多角的なアプローチで向き合うことを大切にしています。
——健康診断を怠って病気の進行に気づかないという事態は避けたいですね。
事業者が専念すべきトップダウン的打ち手、ECのジェネラリストに委ねるべきボトムアップ的打ち手
——それでは健康診断後に、具体的に現場では事業者さまとどのような役割で取り組んでいるのでしょうか??
KR:
まず事業者さまとパートナーはそれぞれフォーカスポイントを分けた方がいいと考えています。
その上でフェーズや業種によっても異なりますが、大規模なEC運営でなければパートナーとしてはジェネラリストのような人材が適しており、ボトムアップ的打ち手にリソースを割くべきだと考えます。事業者側はトップダウン的打ち手に専念していただきたいと考えています。
——なるほど。質問ですが、なぜスペシャリストではなく、ジェネラリストが適しているのでしょうか?
また、トップダウン的打ち手、ボトムアップ的打ち手についても詳しくお聞かせください。
KR:
まずスペシャリストとジェネラリストの違いを説明すると、特定の分野で活躍する人材か、分野横断的に活躍する人材かという意味になります。
例えば、ある程度自社のECサイトが成長している事業者様は、各ジャンルに精通した人の採用・育成に成功していることが多いと思います。そのため、その規模で求める人材は自社の弱みを補完するためのCRM・SNSといった特定分野で90〜120点をとれるスペシャリストになります。
一方で、まだ伸び悩んでいるECサイトをお持ちの事業者様には、多くの領域でまずベースとなる方針を設計する必要があったり、各ステークホルダーと共通言語で対等に議論を必要とするシーンが多いので、どの分野でも80~90点くらいをとることができるジェネラリストの方が適任だと考えています。
そんなジェネラリストがまず取り組むべきなのが、ボトムアップ的打ち手です。
これは「生じている課題から導き出された施策」のことです。日々顕在化していく課題を流動的に解決するためにジェネラリストならではの複数の領域を跨って解決していくことが必要になります。
それに対して、トップダウン的打ち手とは、「ブランドやショップが大切にする世界観・カルチャーから派生した施策」を指します。
これは課題ベースから生じたり、数値を眺めても浮かぶものではなく、外部の人材よりも、そのブランド、プロダクト、抱える顧客に強い想いを持っている事業者サイドが取り組むべきだと言えます。
そしてこのアプローチで生まれたアイディアは合理的だったり定量的に計測できるものである必要はありません。非合理的であり定性的であっても大切にすべきものだと考えており、これらのアイディアこそが中長期的に見た時にブランドアイデンティを形成して強みになると考えております。
これらの事業主さまの頭の中にある思いを解きほぐして引き出して形にしていくのもECの専門家の腕の見せ所だと思います。
KRさんのポリシー:バイアスなしで事業者さまの課題に向き合う
——少し話を変えまして、KRさんご自身のお話をお伺いしていきます。
これまで数多くの企業様のご支援に携わられてきたかと思いますが、その中でポリシーとされているところはありますか?
KR:
そうですね、バイアスなしに事業者さまの本質的な問題に向き合うことを心がけています。
——バイアスとは具体的にどのようなものですか?
KR:
バイアスというのは、事業者さまのEC事業に関わる専門家やベンダーが施策や運営方法について提案する際に自身の見地から物事を述べているということです。それらの意見の全てとまでは言いませんが、多くの場合あくまで彼らが解決できる得意領域にフォーカスした課題にスポットライトを当てるので、その課題が事業者さまの限りあるリソースの中で最優先課題なのか・解決方法は他に無いかはフラットに考える必要があります。
ただ、多くの専門領域を横断しなければならないEC事業では、ステークホルダーは相当数になり、すべての提案を自社の本質的な課題に照らし合わせて考えるのは至難の業です。
そのような状況下で、私個人としても認知バイアスがなるべくかからないように、私の引き出しから答えを出すのではなく、しっかりと事業者さまに向き合い共に考える存在が必要だと考えました。
バイアスなく、事業者さまが本質的な課題や価値提供により多くの時間を割けるよう伴走していきたいですね。
——なるほど。では、そのためにどのような姿勢が大切だと思いますか?
KR:
そうですね。事業者さまに今必要なのは秘密道具ではなくて、”ドラえもん”であり、パートナーだと考えています。
——ドラえもんですか?
KR:
ドラえもんというのは単なる例えですが、要は事業者さまの「こんなこと良いな・出来たらいいな」を叶える存在を目指すことが大事だと思います。
ここ10年くらいでECプラットフォームの台頭はもちろんのこと、EC上で使える秘密道具(ツール)が急激に増加し、EC運営の民主化が目まぐるしく進歩してきました。。
今の課題は、それらの部分的な課題に対するツールが不足しているというわけではなく、適切な課題設定と構造的課題理解にあると考えているので、それらの状況に応じてツールを取捨選択しながら
事業者さまの理想の状態に導くことが重要だと考えています。
——なるほど。”ドラえもん”という表現がしっくりくる気がします!
KR:
はい。やはり本質的な問題とは非常に曖昧で、長期的なスパンで眺めることが重要です。
我々が提供すべき価値は、はっきりと線引きができる課題を解決することではなく、それらの課題を事業者さまが自分の力で見つけ考え抜ける状態を作り出すことです。
すべての知識と作業を事業者さまにインストールして目の前の課題に対して、対等に議論・思考できるプロセスを実現したいと考えています。
知識を秘匿して、自分がいなければ業務が回らない状態を作るのではなく、自分がいなくても企業が自走できる力を身に付けることを目指します。
一方で、本質的な部分に関しては私が多角的なアプローチを提案することで、「ずっと一緒にいたい存在」になりたいですね。
——事業者さまが自走できるように寄り添う姿勢が素晴らしいと感じました。今回はありがとうございました!
おわりに
みなさん、いかがでしたか?
今回のインタビューでは自社ECの売上UPには「健康診断」が大切というお話がありましたね。分析を誤ると、中長期的な課題を見落としてしまう可能性があるため、健康診断はプロにお願いするのも選択肢の1つです。
後編では、アフターコロナのEC市場予測などを教えていただいていますので、ぜひこちらもお読みください!
〜後編:【ポイント解説】アフターコロナのEC事業者はこの2点を抑えよ!〜
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